会計事務所からの転職ガイド│一般企業の経理・別事務所への成功戦略とキャリアパス

会計事務所(税理士事務所)での実務経験は、税務・会計のプロフェッショナルとして市場価値を高める貴重なキャリアです。
その経験を活かせば、別の会計事務所はもちろん、一般企業の経理・財務部門など、多彩なキャリアパスを描くことが可能です。
MS-Japanにも、会計事務所で働く多くの方々からキャリアに関するご相談が寄せられています。
この記事では、会計事務所からの主な転職先である「一般企業の経理」と「別の会計事務所」の2軸で、転職を成功させるためのポイントを詳しく解説します。
会計事務所からの転職は難しい?
転職を考える会計事務所経験者の中には、「自分の経歴で通用するのだろうか」と不安を感じる人も少なくありません。
しかし、転職市場において会計事務所経験者のニーズは高く、別の会計事務所はもちろん、一般企業の経理・財務部門などの他業界を目指すことも可能です。
ただし、会計事務所経験者の転職難易度は年齢と経験業務、保有スキルによって左右されます。
年齢が上がるほど、選考で求められる経験・スキルのハードルは高くなる傾向があります。
たとえば、記帳代行や税務申告業務だけでなく、決算対応や税務調査、顧客対応までメインで担当していた経験やマネジメント経験があると、高く評価されやすくなります。
さらに、資産税や国際税務といった専門分野や、特定業種への深い知見も市場価値を高める要因となります。
また、会計事務所経験者の転職活動では、目指すキャリアを明確にしておくことが、転職成功の重要なポイントとなります。
情報収集が不足していたり、キャリアの整理が不十分だったりすると、転職後のミスマッチにもつながりかねないため、注意が必要です。
会計事務所から転職を考える人のよくある理由
会計事務所での経験は、税務・会計の専門知識を実践的に身につけられる貴重なキャリアといえます。
しかし、会計事務所から転職を考える人も少なくありません。
ここでは、会計事務所から転職を検討する方によくある理由を紹介します。
将来のキャリアへの不安
会計事務所での業務は、記帳代行や税務申告などの定型的な業務が中心です。
そのため、「この先どんなスキルが身につくのか」「このままでは市場価値が高まらないのでは」と不安を感じ、より幅広い実務経験を積める環境への転職を目指すケースが多く見られます。
また、税理士資格の取得を目指さない場合、「科目合格のままではこの職場で評価されにくい」といった不満から、一般企業へキャリアチェンジを検討する人もいます。
労働環境・待遇への不満
会計事務所では、特に年末調整・確定申告・3月決算などの繁忙期に長時間労働が発生することも珍しくありません。
また、個人会計事務所では昇給規定や福利厚生、社会保険制度などが整備されていないケースも多く、「繁忙期の残業がつらい」「給与が上がりにくい」などの不満を感じる人もいます。
ライフステージの変化(結婚・出産など)を機に、より働きやすい職場を求めて転職を考える人が多い傾向にあります。
顧客対応や営業活動への不満
クライアントワークがメインである会計事務所は、クライアントとのコミュニケーションや新規顧客の開拓など、営業的な業務が求められる場面もあります。
「数字には強いが、対人対応があまり得意ではない」「クライアント対応に時間を取られ、本来の会計業務に集中できない」といった不満から、より業務に専念できる環境を求めて転職する方も多く見られます。
社風・人間関係への不満
特に小規模な会計事務所では、所長の方針や人間関係が職場全体に大きな影響を与えます。
そのため、「業務の進め方や教育体制に納得がいかない」「周りとのコミュニケーションにストレスを感じる」といった声も少なくありません。
共に働く人たちとの価値観のズレは、仕事のモチベーションや将来の展望に大きく影響するため、転職理由として非常に多く見られる要因のひとつです。
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会計事務所から一般企業の経理に転職するメリット
一般企業の経理は、財務データの管理や分析を通じて、経営戦略や事業方針の意思決定を支える重要なポジションです。
ここでは、会計事務所経験者の転職先として一般企業の経理が人気である理由を紹介します。
求められるスキルの適合度が高い
会計事務所経験者が持つスキルは、一般企業の経理で即戦力として重宝されます。
近年では、マネジメントや事業戦略と連動する形で経理業務の重要性が増しており、経理の専門人材へのニーズも高まっています。
また、1社の事例だけでなく、様々な企業の経営に携わってきた会計事務所経験者であれば、その知識を転職先で最大限に活用できるでしょう。
このような強みを持つ会計事務所経験者は、中小企業から上場企業まで、さまざまな企業での活躍が期待されています。
ワークライフバランスの両立を実現しやすい
会計事務所では、クライアント数や規模によっては、通常期でも業務量が多くなりがちで、繁忙期にはさらに負担が増すこともあります。
決算など期限が厳密に決まっている業務では、残業や休日出勤が発生することも少なくありません。
一方で、一般企業の経理は年間の業務量を把握できるため、人員配置が適正であれば無理な残業に苦しむことも少ないでしょう。
仕事と生活のバランスも取りやすくなります。
キャリアアップに繋げやすい
会計・税務業務をメインとする会計事務所と比較して、一般企業の経理は幅広い業務を経験するチャンスがあります。
そこで実績を上げれば、課長、部長などの役職へ昇進できる可能性があります。
また、実績と実力次第では、CFO(最高財務責任者)など企業経営に直接関わるポストのほか、経営企画や内部監査といった、より経営の中枢に近いポジションへキャリアを展開できる可能性も広がります。
会計事務所から一般企業の経理に転職した事例
Hさん(30代/男性)
資格:税理士(簿記論 財務諸表論 法人税法 消費税法 住民税)
転職前:大手税理士法人
転職後:一般企業(年収100万円アップ)
大手税理士法人に長年勤めていたHさんは、将来を見据え、定年まで安心して働ける環境を求めて転職活動を開始しました。
Hさんは通常業務に加え、スポットのコンサルティング案件も多く抱えており、転職活動に十分な時間を割くことが難しい状況でした。
そのため、志望度の高い求人だけに絞り込み、すきま時間を使って電話で弊社キャリアアドバイザーと対策を練りました。
Hさんは限られた時間の中でも入念に情報収集を行い、面接当日は落ち着いて対応できたといいます。
最終的に、老舗上場企業の経理担当として内定を獲得しました。
特に会計事務所で働く税理士は、繁忙期と閑散期の差が大きく、転職活動に十分な時間を確保しづらいケースが少なくありません。
転職エージェントを活用して対策することで、多忙でも効率的に転職活動を進められます。
【例文】会計事務所から経理を目指す志望動機・自己PRの書き方
会計事務所から経理への転職を目指すうえで、どのような経験をアピールすべきか悩む方は多いでしょう。
「志望動機」と「自己PR」はいずれも選考で重視される要素ですが、伝えるべき内容が異なります。
志望動機は、「なぜその企業で働きたいのか」という共感や関心を伝えることが目的です。
自己PRは、「自分のどんな経験・スキルが活かせるのか」をアピールすることを目的としています。
志望動機と自己PRに一貫性を持たせることが重要です。
志望動機は「なぜ経理なのか」「なぜその企業なのか」を分けて考える
志望動機を考える際は、「なぜ会計事務所を辞めてまで経理をやりたいのか」と「なぜこの企業を選んだのか」の2軸で考えると整理しやすくなります。
たとえば、「断片的に関与するのではなく、1社の会計を継続的に深く理解し、数字を通じて経営に貢献したい」といった転職理由は、一般企業の経理を目指す理由として自然です。
そのうえで、「●●業界のビジネスモデルに関心があり、貴社の成長戦略に経理として関われる点に魅力を感じた」といったように、企業への関心や志望理由を具体的に伝えましょう。
<志望動機例文>
これまで会計事務所で複数の法人の決算・申告業務を担当してきましたが、1社の会計に長期的に関わることができず、数字がどのように経営判断に活用されているかを実感する機会が限られていました。
今後は、企業の内部から、継続的に会計情報を管理・分析することで、事業の成長に直接貢献できる経理職としてキャリアを築きたいと考えています。
なかでも貴社は、新規事業の展開にも積極的であり、変化に富んだ環境で経理としてのスキルを高められると感じ、志望いたしました。
自己PRは「会計事務所で何をしてきたか」より「どう活かせるのか」を重視
自己PRを書く際は、業務内容を並べるだけでなく、それらの経験を応募先企業の経理でどう活かせるのかを具体的に伝えることが重要です。
たとえば、月次・年次決算の対応経験がある場合は、業務スピードや正確性に加え、経営層とのやり取りを通じて得た説明力や対応力がアピール材料になります。
また、複数クライアントを担当していた場合は、業種ごとに異なる会計処理の知識や、柔軟な対応力をアピールすることもできます。
中小企業では「一人経理」として幅広い業務を担うことも多いため、オールラウンドな経験は高く評価されます。
<自己PR例文>
会計事務所にて約4年間、月次・年次決算、法人税・消費税の申告業務などを担当してきました。
中小企業を中心に15社以上を継続的に担当し、それぞれの業種に合わせた会計処理や経営者への報告・提案なども行ってきました。
限られた時間の中で正確な業務を遂行する力や、対話を通じて相手の意図をくみ取り提案につなげる力には自信があります。
こうした経験を活かし、企業の経理担当として、社内の数字を支える存在として貢献していきたいと考えています。
よくある失敗例
会計事務所経験者によくある失敗として、「会計知識がある」「税務に詳しい」といったスキル面の主張だけで終わってしまうケースがあります。
一般企業の経理では、社内外の関係者との調整力や、業務を安定して継続する力、改善提案力なども求められます。
そのため、知識をアピールするだけでなく、それを活かして「現場でどう動けるか」に焦点を当てることが重要です。
たとえば、「多様なクライアントを担当した経験を活かし、他部署と円滑に連携できます」「業務効率化を支援した経験から、貴社の経理プロセス改善に貢献したい」といったように、再現性のあるポータブルスキルとして伝えましょう。
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会計事務所から別の会計事務所へ転職するメリット
「キャリアアップを図りたい」「より大規模な業務に携わりたい」「職場環境や人間関係に課題を感じている」といった理由がある場合は、別の会計事務所への転職も有力な選択肢となります。
会計事務所は、事務所ごとに業務内容・組織体制・クライアント層が大きく異なります。
転職先によっては、これまでの経験を活かしながら、環境や待遇を十分に改善できる可能性があるでしょう。
ここでは、別の会計事務所へ転職する際に得られる主なメリットを2つご紹介します。
経験を活かして、即戦力として評価されやすい
同業界への転職であるため、記帳代行や申告業務、税務相談など、これまでに培ったスキルや知識を活かすことができます。
特に複数クライアントを担当していた経験や、年末調整・確定申告など繁忙期の対応力は、どの会計事務所でも重宝されるため、即戦力として高く評価されやすいでしょう。
さらに、前職と同じ会計ソフトや申告ソフトを使用していれば、業務に早く適応できるうえ、教育コストの削減にもつながるため、企業側からの評価も高まりやすくなります。
年収アップや待遇改善につながるケースも
会計事務所では規模や報酬体系によって、年収水準や待遇が大きく異なります。
中堅〜大手の会計事務所では、クライアント単価が高く、成果や役職に応じた昇給制度が整っていることが多いため、待遇を改善できる可能性が高いでしょう。
また、実績やスキルによっては、転職時に待遇面の交渉がしやすくなり、自分に合った条件で働ける可能性が高まります。
会計事務所から別の会計事務所に転職した事例
Eさん(30代/男性)
資格:税理士試験2科目合格(簿記論 財務諸表論)
転職前:中堅税理士法人
転職後:個人会計事務所
中堅税理士法人に勤めていたEさんは、担当案件数が少なく、希望する経験が積めないことに課題を感じていました。
また、税理士試験に向けて勉強中であったため、試験勉強に理解のある環境で働きたいと考え、転職を決心しました。
MS-Japanからは、柔軟な働き方に理解のある会計事務所を中心にご紹介しました。
応募者の多い人気求人だったため、応募書類のブラッシュアップや面接対策を徹底し、高倍率を突破して内定を獲得しました。
別の会計事務所への転職で失敗しないためのチェックポイント
同じ会計業界の中での転職は、経験を活かしやすく、スムーズに業務に慣れることができます。
しかし、「職場環境が変わると思っていたのに実態は前職と変わらなかった」「想定よりも業務負担が大きかった」といったミスマッチが生じるケースもあります。
ミスマッチを避けるためには、転職前に以下のポイントを丁寧に確認しておくことが重要です。
所長や上司の考え方・マネジメントスタイル
事務所のホームページやインタビュー記事、公式SNS、面接での会話から、現場の雰囲気や価値観を確認しましょう。
転職エージェントを経由して応募すると、事務所の内部情報に精通したキャリアアドバイザーから情報提供を受けることができます。
業務の内訳と担当範囲
応募先ポジションが担当する業務の内訳や範囲を確認することも重要です。
過去の経験業務や挑戦したい業務との適合性を確認しましょう。
求人情報にも仕事内容は記載されていますが、一部しか記載されていない場合が多いため、面接などで確認するとよりミスマッチを防止につながります。
仕事内容欄の末尾で「その他関連業務」などと記載されている場合は、関連業務の内容を確認することが重要です。
繁忙期の働き方や残業時間
残業代の有無、勤務時間、繁忙期の対応体制などは、事前に確認しておきましょう。
ただし、面接で確認する場合は伝え方に注意が必要です。
その際は、「入社後の業務を円滑に進めるため、繁忙期の業務の進め方やチーム体制についてお伺いできますでしょうか」のように、ポジティブな意図を伝えた上で質問すると良いでしょう。
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会計事務所からの転職は転職エージェントの利用がおすすめ
転職活動は、求人サイトを利用して一人で進めるものと考えている方も多いかもしれません。
しかし近年は「転職エージェント」を活用する方法が一般的です。
転職エージェントとは、転職市場に精通したキャリアアドバイザーが、求人の紹介から応募書類の添削、面接対策、条件交渉のアドバイスまで、転職活動を総合的にサポートしてくれるサービスです。
希望に合った求人の紹介はもちろん、求人票では分からない社風や上司の人柄などの情報も把握しているため、ミスマッチが少なく、納得度の高い転職につながりやすくなります。
また、転職エージェントには、幅広い業種・職種を扱う「総合型」と特定の業種・職種を扱う「特化型」があります。
会計事務所からの転職のように専門性が求められるキャリアチェンジでは、業界の動向や各社の内部事情に精通した「特化型エージェント」の活用が成功の鍵を握ります。
専門性の高いポジションでは、業界知識の深さや保有する求人件数が転職成功の可能性を大きく左右します。
そのため、経理・会計業界の転職支援実績が豊富な特化型エージェントを活用することで、より希望に近い転職を実現しやすくなるでしょう。
まとめ
会計事務所で培った専門性は、転職市場において強力な武器となります。
一般企業の経理として経営に深く関わる道、あるいは専門性をさらに高めるために別の会計事務所へ移る道など、その可能性は多彩です。
理想のキャリアを実現するためには、自身のキャリアプランを明確にし、本記事で解説したポイントを踏まえて情報収集を行うことが第一歩となります。
MS-Japanは、管理部門と士業に特化した転職エージェントとして35年以上の支援実績があり、会計業界に精通したキャリアアドバイザーが、一人ひとりに最適なキャリアをご提案します。
もしキャリアの方向性に迷う場合や、効率的に転職活動を進めたい場合は、ぜひお気軽にご相談ください。
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この記事を監修したキャリアアドバイザー

大学卒業後、幸せに働く人を増やしたいという想いから新卒でMS-Japanに入社。
上場企業を中心とした求人開拓から管理部門全般のマッチングを行い、2021年1月より専門性の高いJ事業部に異動。
主に会計事務所、監査法人、社労士事務所の担当を持ちながら士業領域での転職を検討している方のカウンセリングから案件紹介を両面で行う。
会計事務所・監査法人 ・ 公認会計士 ・ 税理士 ・ 税理士科目合格 ・ USCPA を専門領域として、これまで数多くのご支援実績がございます。管理部門・士業に特化したMS-Japanだから分かる業界・転職情報を日々更新中です!本記事を通して転職をお考えの方は是非一度ご相談下さい!
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